自宅の売却と契約不適合責任
- 2020.04.16
- その他
2020年4月の民法改正(債権法改正)で、売買契約や不法行為に関する規定を見直し、これまで「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが、「契約不適合責任」という名称に変わりました。
瑕疵担保責任とは何なのか
まず、改正前の瑕疵担保責任とはどんな責任だったのかを確認します。瑕疵とは、取引の目的である土地・建物に何らかの欠陥があることをいいます。売主が負わなければならない瑕疵担保責任というのは、買主が注意しても確認ができなかった「隠れた瑕疵」が対象となっていました。
民法の原則では、隠れた瑕疵が発見されたときは、買主が事実を知った時から1年以内に申出れば、売主に対して損害賠償請求か、瑕疵が重大で契約の目的が達成できない場合は契約解除ができると定めています。瑕疵担保責任で、買主が売主に対して請求できる権利は、「損害賠償請求」と「契約解除」の2つだけに限られていたところがポイントになります。
契約不適合責任とは何なのか
契約不適合責任とは、売買契約の履行において、取引された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主が買主に対して責任を負わなければならないということです。簡単にいうと、契約内容と異なるものを売却した場合は、売主が債務不履行により責任を負わなければならない、というのが契約不適合責任になります。
例えば、雨漏りについて買主が了承しており、契約内容に「この建物は雨漏りしています」という内容を書き込んでいれば、契約不適合責任は負わないのです。一方で、買主が雨漏りのことを事前に知っていたとしても、雨漏りがないことが前提の契約書であれば、契約内容とは異なるものを売ったことになり、売主は契約不適合責任を負うことになります。
これまでの瑕疵担保責任で買主が責任追及をできるのは「隠れた瑕疵」とされていましたが、実際は、裁判で争った際に隠れていたかどうかを立証するのが難しいという問題がありました。しかし、改正後の契約不適合責任では、「隠れていたかどうか」は関係なく、契約書に「書かれていたかどうか」が問題となります。
買主が請求できる権利
改正前の瑕疵担保責任で、買主が請求できる権利は「損害賠償請求」と「契約解除」の2つだけでしたが、契約不適合責任では、売主が契約内容と異なるものを売却した際に買主は、「追完請求」「代金減額請求」「損害賠償請求」「契約解除」の4つの請求ができるようになりました。簡単に説明すると以下の通りです。
①追完請求
不具合部分の修理請求。
②代金減額請求
追完請求で修理を請求したが売主が修理しない場合の、代金減額請求。
③損害賠償請求
損害が発生した場合は請求可能
④契約解除
追完請求で修理を依頼したが売主が修理に応じない場合の、契約解除
追完請求の話をすると、売主の中には家を完璧に修繕しないと売却できないのではないかと誤解する方もいますが、そういう話ではありません。契約不適合責任の追完請求は、あくまでも契約内容と異なる場合には契約内容通りに直すということを意味しています。
例えば、雨漏りがあったとしても、それを契約内容にしっかりと明記し、買主が了解して購入している場合には、修繕しなくても良いということになります。よって、契約不適合責任は、完璧なものを売らなければいけないという話ではないのです。
契約不適合責任の期間
改正前の瑕疵担保責任は、買主が瑕疵の事実を知った時から1年以内に損害倍総請求や契約解除を請求しなければいけないとされていましたが、改正後の契約不適合責任では、買主が契約不適合を知った時から1年以内に契約不適合の事実を売主に通知すれば権利が保全されることになります。この点で期間が異なります。
ですので、改正後の条文では、目的物を売却後、買主は不適合を知ったときから1年以内に売主に通知すれば追完請求等をすることが可能です。そのため、買主が通知できる期間を制限しない限り、売主は長期間に渡って契約不適合の責任を負うことになります。そこで、新民法以降の売買契約書では、売買契約書において契約不適合責任の通知期間を決めることが通常です。この通知期間に関しては、恐らく3ヶ月が主流になると思われます。
免責特約の有効性
改正後の契約不適合責任も免責特約は有効です。瑕疵担保責任も契約不適合責任も「任意規定」です。任意規定とは、契約当事者(売主・買主)が合意すればその特約は有効であるという規定です。ただし、契約不適合責任を免除する特約は常に有効であるとは限りません。法律は、契約不適合責任免除特約が無効となる場合を規定しています。それを「強制法規」と呼びます。
例えば、借地借家法で「借主からの家賃減額請求を認めない」といった借主に不利な特約は借地借家法第32条に反し無効です。法律には、このように当事者が合意しても無効となってしまう強行法規が一部に存在します。
契約不適合責任は任意規定ですので、売主の負担を軽減するような特約を締結しても有効です。そのため、従来通り築年数の相当に古い建物を売却する際、売主が契約不適合責任を一切負わないとする特約も締結できるのです。従来で言うところの瑕疵の多い物件は、適宜、契約不適合責任の免責条項を入れることを忘れないようにしなければいけません。
契約不適合責任の注意点
売買契約書の特約・容認事項をしっかり書くことが最も重要になります。売主としては、気になることは全て容認事項に書きだし、契約書と物件の現状を適合させることが重要となります。
また、契約不適合責任は悩ましい論点があります。それは「代金減額請求」と「契約解除・損害賠償請求」が両立していないのでは?という点です。どういうことかというと、代金減額請求をしている時点で、契約を肯定しているにも関わらず、契約がなかったものとする契約解除は矛盾しているのではないかという考え方、また、代金減額することは、損害を解消していることなのに、さらに損害賠償請求もするというのも両立していないという考え方です。そこで、不動産業界において個人間売買では、代金減額請求の条項は設置しない方向で調整が進んでいます。
また、中古住宅の設備は多少の不具合があることが一般的で、設備にも契約不適合責任を適用するとスムーズな取引が行えなくなってしまいます。そこで、設備に関しては責任を負わないとする条文を記載することが重要になります。
これからの不動産売買は、目的物の内容をハッキリさせる必要があるため売却活動の前にインスペクション(住宅診断)を行うことが望ましい対応となります。売買契約書に目的物の内容を明確に書き、売主を契約不適合責任から守る、買主の不安を取り除く対策を取る必要があります。
まとめ
民法の改正により、売主の責任は一層重くなりました。契約不適合責任も任意規定ですので、引き続き免責条項は有効です。売主・買主の双方にとっても、契約書に目的物の内容をしっかりと書き込むことが何よりも重要です。新しい契約不適合責任の趣旨を十分に理解し、不要な責任を問われないよう準備した上で取引きをするようにしましょう。
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