親が住宅ローンを払えない…
- 2020.06.04
- 住宅ローン
ご本人からではなく、ご家族やお子様から住宅ローンのご相談をいただくことがあります。内容としては、「親が住宅ローンを払えない」「親がローン返済を滞納している」というものです。
ご両親が住宅ローンを組んだタイミングであったり、あてにしていた退職金や年金収入が予定通りでなくなったり、住宅ローンを組んでいる30~35年という長期間の中では何が起こるかなかなか想像できないものです。40歳で35年の住宅ローンを組んだ人は75歳まで返済をしなければいけません。
お子様の立場としては、出来る限りのことはお手伝いしたいというお気持ちからのご相談だと思います。どのような解決方法があるのか考えていきましょう。
老後破綻の原因
❶退職金と年金があてにならない
定年退職した後に収入が激減し、貯金も底をつき住宅ローンを払えなくなる「老後破綻」という言葉をよく聞くようになりました。当然かもしれませんが、マイホーム購入時の計画の中で、退職金や年金収入をあてにしていた人が多いのではないでしょうか。
しかし、定年退職すれば退職金がもらえて、毎月十分な年金収入があるというのは、今はもう昔ばなしで、長引いた不景気の影響で各企業は退職金の額を減らしている傾向にあります。また、退職金自体がない企業もあります。
そして、年金も、公務員や会社員だった65歳以上が受け取れる老齢基礎年金・老齢厚生年金の平均支給額が男性207万円(1ヶ月で17万円)、女性で131万円です。自営業者や専業主婦だった65歳以上が受け取れる老齢基礎年金の支給額が78万円(1ヶ月で6.5万円)です。一方で、老後の最低日常生活費は月額平均で22.1万円といわれています。
年金だけでは生活はしていけない状況です。それにプラスして住宅ローンの返済となると厳しくなるのは当然のことです。
データは生命保険文化センターの統計を参照しています。
公的年金はいくらくらい受け取れる?
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/9.html
老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/7.html
❷定年後も住宅ローンが残っている
35年の住宅ローンを利用されていることがほとんどでしょうから、上でも書きましたが、40歳で35年の住宅ローンを組んだ人は75歳まで返済をしなければいけません。65歳で定年退職を迎えたとしても10年間は住宅ローンの返済をしなければいけません。
まだ身体が健康なうちは働けますが、働けなくなると年金から住宅ローンの返済をしていくのは困難になります。定年を迎えて老後破綻に陥る人が多いのです。
❸相談が遅れるケースが多い
日々の生活と住宅ローンの返済が困難になったとしても、「子どもに迷惑をかけられない」と親の立場からすると意地を張ってしまうものです。経済的な問題というのは、たとえ親子の仲といっても言い出しにくい、相談しづらい問題かもしれません。
最悪の場合、銀行からの督促状などで発覚するケースもありますので、様子がおかしいなと気付くことがあれば、ひとこと声をかけてあげるようにしましょう。お子様にも生活があり経済的な援助が難しいかと思いますので、色々な解決方法を検討します。
老後破綻に陥った時の対策
親子間売買
親が住宅ローンを滞納してしまい、そのまま放置すると競売の手続きが進められます。競売では落札者が決定されると拒否できませんが、任意売却では、あらかじめ売却先を決めることができます。それが親子間売買です。
親子間売買は、読んで字のごとく親子間で不動産の売買をすることです。子どもが親の住宅ローン残債を完済できるのであれば問題ありませんが、そうでない場合、債権者の納得できる金額設定でなければいけません。
ほとんどの金融機関は、親子間売買の審査ハードルを高く設定しています。というのも、親子間の所有権移転は、相続や贈与があるにも関わらず、なぜ売買するのかというところを疑うのです。売買金額に融通を利かせたり、財産隠しの手段として利用されているのではないかなどの疑問が生じます。また、特に自営業者の場合は、住宅ローンは事業ローンより金利も低いので、売買に見せかけて他の用途への資金調達に使われないかと疑われることもあるでしょう。
そのようなこともありますので、親子間売買をご自身たちで金融機関に相談しても高確率で断られます。その場合は、必ず任意売却仲介業者と一緒に交渉する必要があります。そして債権者の同意と、お子様側の住宅ローンの組立てが上手くいけば親子間売買は成立し、自宅はそのままでご両親も住み続けることが可能となります。
リースバック
子どもがすでに住宅ローンを組んでいるので頼めないというような場合は、リースバックという方法があります。リースバックとは、自宅を投資家や不動産会社の第三者に売却し、その買主から賃貸物件として借りることで売却後もそのままご自宅に住み続けられるという仕組みのことです。
「売却金額>住宅ローン残債」のアンダーローンの場合は、まとまった資金を手元に残し住み続けられ、「売却金額<住宅ローン残債」のオーバーローンの場合でも、任意売却によって条件を満たせば、住み続けることができます。条件というのは、
❶債権者(保証会社・サービサー)の同意が必要
同意が得られなければリースバックができません。また、売却価格の決定権は債権者(保証会社・サービサー)にあり、売却は認められても債権者の指定した売却価格にリースバックでの評価額が届かない場合は成立しません。
❷買い手が見つからないと始まりません
買い手からすると投資物件となりますので、都心部またはその周辺にある物件か?流通性の高い物件か?投資物件として魅力的な物件かを総合的に判断します。
❸毎月の家賃を安定的に支払える収入があること
これから賃貸物件に住み続けますので年金収入でも構いませんが、家賃を支払える収入があることが大前提となります。そして、毎月の賃料支払いが滞ると退去させられます。
任意売却でリースバックを利用するとなれば、これらの条件を満たす必要があります。
成立すれば、住宅ローンの返済や固定資産税、管理費・修繕費などの費用負担はなくなる代わりに、毎月の家賃が発生します。それでも、検討前と比べて負担が軽減できるのであれば、選択肢のひとつとして良いのではないでしょうか。
マイホーム売却
ご両親おふたりだけであれば今の自宅は広すぎる。掃除や修繕などが面倒だ。というようにご自身の過ごされてきた、マイホームにそこまで固執しないという事であれば、売却して生活環境の変わらない賃貸物件に引っ越すという選択肢も良いかもしれません。
住宅ローンや固定資産税の負担がなくなりますので、費用負担の軽減にもつながるでしょう。万が一「売却金額<住宅ローン残債」のオーバーローン状態であれば任意売却で解決することが可能です。
まとめ
親世代の住宅ローン破綻について考えてきましたが、何より大切にしたいのは親御さんのお気持ちだと思います。ただし、既に住宅ローンを滞納してしまっている場合は早い段階で専門家にご相談することをお勧めいたします。状況を詳しくお聞かせいただけると上記以外の解決方法もご提案できるかもしれません。
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