住宅資金特別条項と個人再生について
- 2020.07.21
- 債務整理
借金を整理しながらマイホームを残すことができる方法があります。それが個人再生の住宅資金特別条項といわれるものです。
住宅資金特別条項は住宅ローン特則とも呼ばれています。今回は、個人再生手続きと住宅ローン特則について解説していきます。
住宅ローン特則とは
住宅ローン特則とは、住宅ローンを返済中で借金の返済ができなくなってしまった方が、マイホームを失うことなく債務者を経済的に再生できるようにするための制度です。
住宅ローンを組むときは、購入する不動産に住宅ローンの担保として「抵当権」を設定するのが一般的です。住宅ローン以外の借金などで住宅ローンの返済が困難となってしまった場合に、債権者の抵当権行使によって住宅を手放さなければならない場合があります。
しかし、住宅はその他の財産と違い生活の基盤で、経済的更生につながるものです。個人再生手続を行った後も返済は続いていくため、その基盤を失わないように住宅を確保するために、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」が設けられています。
自己破産をする場合には、住宅を手放すことになってしまいます。自己破産により住宅を手放したくないものの、住宅ローンとその他の債務の返済が困難な状況の場合、住宅ローンは支払いつつ、債務を圧縮してもらうこのとのできる個人再生の住宅ローン特則を検討される方が多いのです。
住宅ローン特則の注意点
住宅ローン自体は個人再生での減額対象にはなりません。ただ、住宅ローン特例では、住宅資金貸付銀行等と事前に協議する事で、既に住宅ローンの支払いを遅滞している場合には、期限の利益を復活させたり(期限の利益回復)、再生計画に住宅ローンの返済の支払いを最長10年間延長(支払期限延長)、再生計画に元本の一部、および利息のみを支払う(元本据え置き)を内容とする条項を定めることも出来ます。
住宅ローン特則適用後は、住宅ローンに加えて個人再生手続により減額された借金も併せて原則3年(最長5年)で返済しなければならないため、当然ながらしっかりとした返済計画が必要になってきます。
住宅ローン特則が認められる要件
個人再生を選択される理由として、住宅ローン特則でマイホームを残したいという方が多くいらっしゃいます。しかし住宅ローン特則が認められるにはいくつかの条件があります。
住宅の新築・リフォームに必要な資金であること
住宅の新築やリフォーム、借り換えのローンであったとしても問題はありません。ただし、抵当権が設定されている必要があります。
借り換えの際に住宅ローンのほかに事業資金等の融資を受け、それを担保するため住宅に抵当権を設定した場合は認められません。
不動産に住宅ローン以外の抵当権が付いてないこと
複数の金融機関から住宅ローンを組んだ場合でも、住宅ローンであれば問題ありません。ただし、事業用資金などのローンを組んだ際に、不動産に抵当権を設定した場合は、住宅ローン特則の適用外です。
債務者本人が所有していること
住宅は自身の居住用の建物で、建物床面積の半分以上が居住用になっている必要があります。たとえば、自宅兼店舗であるような場合でも、半分以上が居住用であれば、住宅ローン特例を使う事は出来ます。
また、所有は共有も含みますので、例えば妻と持分が共有になっていても問題ありません。
夫婦共有のローンの場合で、例えば妻に住宅ローン以外に債務がなく、個人再生を利用する必要がない場合、東京地裁では、夫単独の申立でも住宅ローン特例を認めたことがあります。
債務者本人が居住用の住宅であること
住宅ローン特則は、債務者本人が生活の本拠として使用している建物を確保することで生活基盤を守ることが目的となるので、建物を友人に貸している場合は、住宅ローン特則は使えません。また、別荘のような生活の本拠としていないような住宅にも使えません。
代位弁済後、6ヶ月を経過していないこと
住宅ローンを数ヶ月滞納した場合、保証会社が金融機関に対して代位弁済を行います。この代位弁済が終わって6ヶ月が経過すると住宅ローン特則は使えません。
住宅ローン特則が使えないとき
税金滞納がある場合
税金滞納が理由で住宅に差押え登記がされている場合は、住宅ローン特則を定めることが難しいためできません。滞納分を一括解消する必要があります。ただし、債権者に分納の同意を得られれば手続きができる可能性があります。
個人再生の種類
個人民事再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者再生」の2種類の手続きがあります。原則は、小規模個人再生で、給与所得者再生は特則となっています。
小規模個人再生
個人再生の基本的な手続きが小規模個人再生です。アルバイトでも自営業の人でも「継続的に又は反復して収入を得る見込みのあること」の要件を満たせば利用が可能です。ただし、再生計画(支払いスケジュール)を提示し、債務を大幅に減額することについて、債権者の意見を聞きます。債権者の過半数が反対しないことが要件となっています。過半数が反対意見を出した場合は、小規模個人再生を続けることができなくなります。
給与所得者再生
一般のサラリーマンなど将来の収入を確実に近い形で把握できる人を対象にする手続きで、債権者の意見を確認する必要がなく手続きを進めていくことができます。ただし、再生計画の公正を担保するために「可処分所得額2年分」という返済基準が増えます。要は、最低でも可処分所得(収入から生活費を引いて余った分)の2年分以上の額は払ってくださいというものです。しかし、家族構成や地域によりますが計算すると、小規模個人再生の場合より高額になってしまうケースが多いので、小規模個人再生を利用するのが一般的です。
個人再生のメリット・デメリット
メリット
貸金業者からの督促がSTOP
貸金業者が、司法書士や弁護士からの受任通知を受け取った時点で消費者金融やクレジット会社からの督促はSTOPします。貸金業法でそれ以後は本人に連絡することが禁止されています。これは一番早く感じるメリットではないでしょうか。
債務額を大幅に減額できる
減額についてまとめると以下の表のようになります。
個人再生は、自己破産のような免責不許可事由がありません。借金の理由がギャンブルであったとしても、大幅減額が不許可になる理由とはなりません。ただし、債権者が反対してくる理由にはなりますので、そこは注意してください。
また自己破産と違い、基本的に車や住宅のような財産が処分されることはありません。ただし、自動車ローンなどで担保に取られている場合は債権者に引き上げられることはあります。
住宅ローン特則で住宅を残して債務整理ができる
これは上でも書いた内容になりますのでここでは割愛いたします。
デメリット
ブラックリストに登録される
信用情報機関に個人再生の手続きを取ったと5~10年ほどは記録が残ります。その間は、新たな借入れや、分割購入ができなくなります。ただしこれは、数ヶ月間ローンの滞納や債務整理をすれば事故情報は登録されますので、個人再生だけに限ったことではありません。
保証人のある借金の場合は保証人に影響がでる
借金に保証人が付いている場合、債権者は保証人に返済を求めることになります。債権者は、借主が返済できなくなったときに備えて保証人を確保しているのですから、保証人へ請求しないようにさせることは難しいです。
官報で公告される
官報は国が発行している新聞のようなもので、個人の裁判内容も掲載されます。個人再生は申し立てると、手続きの各段階で個人再生をしていることが官報に公告されます。官報には氏名や住所も掲載されますので誰にも知られずという訳にはいきません。ただし、一般の人がこれを見ることはまずありませんので、これにより他の人に知られてしまう可能性はそれほど大きくないといえるでしょう。
まとめ
個人再生は手続きの煩雑さはありますが、マイホームを残せるという大きなメリットを考えると、デメリットは比較的少ないと感じるかと思います。
繰り返しになりますが、個人再生は裁判所への申し立てなど、専門的な知識が要求される手続きです。また手続きをすれば、誰でも認めてもらえるものでもありませんので、専門家に相談するのが良いでしょう。
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