債務整理ガイドラインとは?
- 2020.10.08
- 債務整理
10月5日の報道で、新型コロナウイルスの影響で債務の返済が不能になった個人や個人事業主が借り入れた債務を減免する特例措置について、金融庁が12月1日から適用する方針を固めたことが分かったとありました。
住宅差し押さえや自己破産などの法的な手続きを取らずに生活や事業の再建を後押しするという内容です。
今までにあった、大規模な自然災害で家屋が倒壊するなどし、ローンが返済できなくなった個人の生活再建を支援する指針「自然災害債務整理ガイドライン」を10月中に改正し、対象に新型コロナウイルスを追加するというものです。金融庁は、全国銀行協会や日本弁護士連合会への説明を既に始めており、関係団体は大筋で了承しているといいます。
ということで、現段階ではまだ対象となってはいないのですが、「自然災害債務整理ガイドライン」の対象に追加されたときにどのような対応がとれるのかを解説していきます。(正式に決定すればまた更新したいと思います)
「自然災害債務整理ガイドライン」とは?
日本では地震、台風・豪雨、火山噴火など、様々な自然災害が起き、命が失われたり、住まいや仕事場などに大きな損害を受けたりします。また、たとえ命が助かったとしても住む家や働く場所を失ったりすると住宅ローンや事業ローンなどの借金が残ってしまうことも少なくありません。
そのようにローン返済ができなくなってしまった場合の手続きとして「自己破産」や「個人再生」といった債務整理の手続きがありますが、こうした法的手続きにより債務整理を行った場合は、個人信用情報として登録され、一定期間は生活や事業を再建するための資金の借入れが受けられないといった問題がでてきます。
そこで「自然災害債務整理ガイドライン」は平成27年(2015年)12月に取りまとめられた民間の自主的なルールであり、平成28年(2016年)4月から適用が開始されました。このガイドラインを利用することによって、住宅ローンなどを借りている被災者が、破産手続きなどの法的な手続によらず、銀行などの金融機関との話し合いにより、ローンの減額や免除を受けることができます。
ガイドラインを利用できる方は、平成27年9月2日以降に「災害救助法」が適用された自然災害の影響によってそれまでに抱えていた住宅ローンや自動車ローン、事業ローンなどを返すことができない、または近い将来に返せなくなることが確実と見込まれる個人または個人事業者の方です。法人は対象外です。
適用状況はこちらから確認できます。
http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo1-1.pdf
内閣府「災害救助法の概要」P11~P21
それに加えて、次のような要件を満たすことが必要です。
- 災害が発生する以前に、対象債権者に対して負っている債務について期限の利益喪失事由に該当する行為がなかったこと
- このガイドラインに基づく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること
- 債務者が事業の再建・継続を図ろうとする事業者の場合は、その事業に事業価値があり、対象債権者の支援により再建の可能性があること
「令和元年8月の前線を伴う大雨による災害」や「令和元年台風第15号による災害」「令和元年台風第19号に伴う災害」「令和2年7月3日からの大雨による災害」で住宅や事業所などが被災し、ローンの返済が困難になった方は、上記のような一定の要件を満たす場合には、本ガイドラインに基づく債務整理を申し出ることができます。
これに新型コロナウイルス感染拡大の影響による住宅ローン返済困難で債務整理が必要となった方も対象に含まれるようになる予定だということです。
「自然災害債務整理ガイドライン」でのメリットは?
法的手続きによる債務整理の方法として、「破産手続」「再生手続」の2つの手続きがあります。どちらの手続きで債務整理を行うかは、債務者の債務状況、支払能力などによって選ばれます。
債務者に債務の支払い能力がない場合に、債務者の財産を充てて債務を清算し生活の立て直しを図る場合は「破産手続」
将来の給料などの収入によって、債務を分割して返済する計画を立て、計画に沿った返済をすることで残りの債務が免除してもらえるようにする場合は「再生手続」
これらの手続きを行うと、債務整理したことが個人信用情報として登録されてしまうので、一定期間は新たな借入れをしたり、クレジットカードの利用・発行ができなくなります。
「自然災害債務整理ガイドライン」により、債権者との合意に基づき特定調停手続きを行うことでこのようなデメリットを回避でき、債務免除を受けることが可能となります。
メリット➀
国の補助により弁護士等の「登録支援専門家」が無料で手続を支援します。
本ガイドラインに基づく債務整理を的確かつ円滑に実施するために、弁護士などの「登録支援専門家」が、債務者及び債権者のいずれにも利害関係をもたない中立かつ公正な立場で本ガイドラインに基づく手続を支援します。
メリット➁
財産の一部をローンの支払いに充てずに手元に残すことができます。
具体的には、債務者の被災状況や生活状況などの個別事情により異なりますが、預貯金などの財産の一部を「自由財産」として残すことができます。
メリット➂
個人信用情報として登録されないため、新たな借入れに影響が及びません。
破産手続・再生手続とは異なり、本ガイドラインに基づく債務整理の場合には、個人信用情報として登録されません。そのため、その後の新たな借入れにも影響が及びません。
http://www.dgl.or.jp/guideline/pdf/disaster-gl_leaf.pdf
一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関
「自然災害の影響で住宅ローンなどの返済にお困りではありませんか?」チラシ
新型コロナウイルス感染拡大による影響も自然災害同様に扱われ、通常の債務整理とは違い、このようなメリットがあります。
手続きの流れ
➀手続着手の申出
最も多額のローンを借りている金融機関等へガイドラインの手続着手を希望することを申し出ます(受付窓口は金融機関へ確認してください)。金融機関から借入先、借入残高、年収、資産(預金など)の状況をヒアリングされます。
➁専門家による手続支援を依頼
金融機関から手続き着手について同意が得られた後は、地元弁護士会などを通じて、自然災害債務整理ガイドライン運営機関に対して「登録支援専門家」による手続支援を依頼します。
➂債務整理の申出
金融機関に債務整理を申し出て、申請書のほか財産目録などの必要書類を提出します(書類作成の際は「登録支援専門家」の支援を受けることができます)。債務整理の申出後は、債務の返済や督促は一時停止となります。
➃「調停条項案」の作成
「登録支援専門家」の支援を受けながら、金融機関との協議を通じて、債務整理の内容を盛り込んだ書類「調停条項案」を作成します。
➄「調停条項案」の提出と説明
「登録支援専門家」を経由して、金融機関へガイドラインに適合する「調停条項案」を提出・説明をします(金融機関は1ヶ月以内に同意するか否か回答します)。
➅特定調停の申立
債務整理の対象にしようとするすべての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所へ特定調停を申し立てます(申立費用は債務者の負担となります)。また、特定調停の場には債務者本人が出頭する必要があります。
➆調停条項の確定
特定調停手続きにより調停条項が確定すれば債務整理成立です。
まとめ
上記で説明したものは、現在適用されている「自然災害債務整理ガイドライン」の内容です。先日の報道ですと、これを10月中に改正し、12月1日から適用できるようにするとのことです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響での失業・収入減で住宅ローンが払えなくなったという状況は、自然災害などでマイホームを失ったケースとは大きく異なりますので、債務整理した後マイホームを保有したままで良いのか?売却しなければならないのか?など改正されるガイドラインの不明点に注意するべきところはありますが、少し対応の遅さは感じますが少なからず救われる人も多くなるのではないでしょうか。
今後の金融庁の発表に注目です。新たな報告があればまた記事にします。
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