住宅ローンが残っている家でも売却できるの?
住宅ローンを返し終わらないと家の売却は難しいのではないでしょうか?自宅の住宅ローンはまだ1,800万円残っています。近所の同じような売物件を見ると1,500万円程度です。このような場合は、差額を用意できなければ売却できないのでは?
結論からいうと売却は可能です。
金融機関は住宅購入資金を貸出す際に、「抵当権」を土地・建物に設定し、返済が滞った場合は、担保物件を差押えて売却することで資金回収を可能にする権利を持っています。
売却の際は、原則として金融機関は住宅ローンを全額返済することが条件で応じます。ここで、売却して住宅ローンを完済できる場合と、完済できない場合とが考えられます。
⑴ 「売却価格>住宅ローン残債」の場合
住宅ローンが完済できる状態ですので問題ありません。これを通常売却・一般売却と呼ばれます。
⑵ 「売却価格<住宅ローン残債」の場合
このオーバーローンの状態では住宅ローンが完済できません。差額を準備することで通常売却・一般売却が可能です。ご相談者の場合、300万円を預貯金または他からの借入れ、または住みかえローンを検討すれば解決できます。
家を売却するには、住宅ローンを完済させてこの抵当権を抹消しなければなりません。売却価格よりも住宅ローンの残債のほうが多い場合は、預貯金などで差額を補填して完済します。しかし、差額が補填できない場合は、完済することができません。原則、住宅ローンを完済させて抵当権を抹消できなければ、家を売却することに応じてもらえないのです。
しかし、家を売却しても住宅ローンが残る状態で、差額を補填できなくても、売却できる方法があります。それが「任意売却」です。
任意売却は、住宅ローンを滞納して金融機関が保証会社に代位弁済(あなたに代わって残債全額を返済すること)された状態が大前提になりますが、粛々と進められる競売の手続きを回避して自宅を市場で売ることを目指す方法です。
当然、債権者(金融機関・保証会社)の合意を得られなければできません。具体的に見てみましょう。
【ケーススタディ】住宅ローンの滞納が始まり、どうしようか?
≪相談者の状況≫
Nさん 40代夫婦 神奈川県平塚市 築15年戸建て夫婦共有名義
残債2,580万円に対し、近隣相場2,200万円
借入先は都市銀行
≪ご相談内容≫
元々ご夫婦共働きしていたため、収入合算して住宅ローンを組んで、新築戸建てを購入したのですが、近所に住む親の介護でほぼ付きっ切りとなったNさんの奥様は、仕事を辞め、働きに行けなくなり、旦那様単独の収入だけでは返済が厳しくなってローン滞納が続いていました。お子さんのこれから高校・大学への進学を考えると将来が心配になり、任意売却を考えたいということでした。ご夫婦ともに真面目で実直な方という印象でした。
≪ご提案内容≫
まだ、滞納されてすぐの段階でしたので、金融機関への返済条件交渉や、他行での借換えのシミュレーションをとって検討してみましたが毎月の返済額が条件に合わず、ご自宅を売却して無理せず、お子さんの学区が変わらない賃貸マンションに転居することをご提案しました。
≪結果≫
売却価格2,300万円で残債務が約280万円となりました。Nさんご夫婦の状況に債権者と交渉をすすめる中で、引越し代も捻出でき、残債務は無理のない月1万円ずつ支払うことが決まりました。ご本人達も、引越し代を捻出してもらえたことに感謝をされており、残債務も近い将来に一括で返せるようしますと転居されて前向きに新生活をスタートされた印象でした。
このNさんご夫婦のように、任意売却では、売却価格で返済しきれなかった残債務は、債権者と話し合いのうえ無理のない金額で交渉して返済していくことができます。
人それぞれ、家族構成、収入と支出など取り巻く環境こそ違いますが、リストラ・給与カット・離婚・病気・ケガ・親の介護などを発端に、この様な事案は誰にでも起こりえることです。住宅ローン返済が滞りそうだな、どうしようかと気になった時点で早めのご相談をいただけると解決へ向けての期間と選択肢は大いにあります。